ポスト2020生物多様性とNACOTの活動
その昔、2010年10月に名古屋で生物多様性締結国会議(COP10)が開催されました。NACOTからも多くのメンバーが参加し、セミの抜け殻を展示して、身近な生きものを通じて伝えていく生物多様性保全PRを、世界中から会場に来ていただいた大勢の方々にメッセージいたしました。愛知ターゲットの2020年の目標は、残念ながら未達成に終わりましたが、迫っている課題の改善に向けて、私たちの活動は継続しています。
2022年12月、カナダのモントリオールにて「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」が開催されました。そこでは、愛知ターゲットの後継となる、新たな生物多様性に関する国際的な目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。ここには、国際的目標として23個のターゲットが掲げられています。
これを受けて、我が国では2023年3月31日に、「生物多様性国家戦略2023ー2030」が閣議決定されました。この生物多様性国家戦略は、2030年ネイチャーポジティブを目指して、
【1】 生態系健全性の回復、
【2】 自然に根差した解決策、
【3】 ネイチャーポジティブ経済、
【4】 ライフスタイルや消費の変容、
【5】 基盤整備と国際協力
という5つの柱を掲げています。
その取組には、5つの基本戦略が示されております。このうち「【1】 生態系健全性の回復」では、「30by30」に沿って、陸域及び海域の30%を保護又は保全するとともに、それらの地域の管理の有効性を強化することが行動目標の一つとなっています。
地球に命が誕生して38億年、長い時間を経て、現在の生命の多様性が生まれました。地球上には分っているだけで175万種の生物がいることが確認されています。さらに未確認の生物を加えると生物の種は1千万から1億種と推定されています。
生物の多様性とは、人間だけでなく、この地球に生きる全ての生命の多様さと、それらが相互につながりを持っていることをいいます。私たちの暮らしは、生物多様性の恵みを利用することから成り立っています。
残念ながら、大規模な開発、外来生物の侵入、温暖化や気象の変動、化学物質による汚染などにより動植物の絶滅は加速しています。生物多様性が失われ、地域から更に地球規模で自然環境のバランスを失うことは、私たち人間が、今まで得られてきた自然の恵みを失うことです。このままでは、やがて私たちの暮らしを維持することもできなくなってしまいます。
生物多様性の保全は、自然保護の目標であり、人類の今後の存続と地球規模の生態系の急激な変化を防ぐために何より必要なことです。このことを、NACOTでは、自然観察会という形で、多くの子どもたちや市民にやさしく、分かり易く伝えていくことを、会のミッションとしています。